「あれって、ウェーデルンじゃん」シュテムターンができるうようになったお兄さんが、ボソッと一言。
「私達、ボーゲンクラスなのにぃー」あきれ顔のお姉さんがぷーっとふくれます。
それでもゲレンデに立ちつくしていても始まらないので、私達は１人１人、インストラクターの美しいラインを大幅にくずし、バタバタと転びながら滑って行ったのでした。
「ダーメだよぉ。ラインくずしちゃ」インストラクターは不満顔です。
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| まだボーゲンで滑っていた頃 |
「だって僕達まだパラレルだってできないのに・・・・」と、さっきのお兄さんが訴えます。
「いいんだよ。スキーは直滑降が基本なんだから。転ばなきゃいいんだ。直滑降できない時に仕方なくターンするんだよ。長いリズムでも短いリズムでも、ボーゲンだって早く滑れりゃ、それが１番なんだ。じゃ、もう１本行きましょう。ショートリズムで」
ア然とする私達を尻目に、彼はさっさとリフトに乗るのでした。
スキースクールの仕上げは“スキーツアー”でした。“同じゲレンデは２度と滑らないという大胆なテーマ”をもとに、志賀高原を滑りまくるというのです。その頃の私には、“大胆なテーマ”の意味がわかりませんでした。何しろそれまで行ったことのあるスキー場といえば、石内丸山、草津、斑尾くらいでしたから、“同じゲレンデは２度滑らない”なんて、いくらボーゲンクラスの私達でも、午前中で滑るところがなくなってしまい、午後はインストラクターが昼寝でもしようってことなんじゃないかと思ったのです。
「さあ、明日はいよいよ志賀名物のスキーツアーだぞー」
このスキースクールに何度か通っている、中級クラスのお兄さんが気合いを入れていました。“大胆なテーマ”に、何が隠されているのか知る由もなく、私はお風呂でバタ足の練習なんぞをしてから、グガーっと爆睡に入ったのでした。
(yumi)