■ 天体観測所【銀河】製作記　　　　　　　　　　　　　　　　　　前編に戻る

（所在地：東経139度9分23秒、北緯36度4分55秒）

●後編／完成まで

	■観測室は屋根が開いた状態では壁の強度が落ちるため、一般住宅以上に筋違い（すじかい）が入っています。またスライディングルーフは大型のゴムキャスター６個で支えられた屋根がコの字型の鉄製レールの中をスムースに滑り、準備室の屋根の上に格納されます。また、あおり止めが付いているので屋根が台風で飛ぶこともないです。
	■観測室南側は、望遠鏡を水平近くまでに向けることもあるので、壁の上部を開閉式にしてあります。壁には一般住宅並にグラスウールの断熱材がしっかり入っていて安心です。
	■１９８９年３月完成。嬉しくなってせっせと荷物を運びました。外壁は茶系、屋根はブルーのトタン仕上げと地味ですが、これは牧場の景観を壊さないためでもあります。観光客やハイカーはよくバンガローと間違えます。
	■観測室南側の眺望。望遠鏡が地平線下まで向くのでカノープスも楽に捉えられます。
	■写真は準備室から観測室を見たところです。準備室の床にはウレタンフォームのような硬質断熱材と厚手のカーペットを、観測室にも厚手のカーペットを２枚重ねで敷きました。
	■アンカープレートの設置。赤道儀ピラーの下に敷き、赤道儀の方角と高さを決めるためのベースとなる厚さ２０ｍｍの鉄板。コンクリートに差したアンカーボルトで固定します。アンカープレートから突き出た太いボルトが赤道儀ピラー内部のステーにガッチリと固定されます。このプレートは、アスコから赤道儀搬入前に届きました。
	■１９８９年５月２８日、赤道儀搬入。観測所２ヶ所、２台分のアスコＳＸ－２６０が納入されました。
	■梱包を解いてピラー、極軸体、赤緯体、ウエイトをそれぞれの観測所へ。内部稼働式のウエイトはその円筒形状もさることながら、保護ワックスがよく効いて滑りやすく、大人４人がかりでやっとのことで運びました。
	■組み上がった赤道儀と準備室（左）。機材はいつでも加工できるようにボール盤と簡単な工具を用意してあります。
	■ヨシカワ光器ＹＫ－２５０Ｆ６反射、アストロフィジクスＳＤＦ１５５ｓ、ペンタックスＳＤＵＦⅡ、ＳＴ－４のガイド鏡としてビクセンＦＬ－８０を搭載したアスコＳＸ－２６０ＰＷ赤道儀。（現在はアストロフィジクスＳＤＦ１５５ｓ、ＳＴ－４、ＦＬ－８０を降ろし、ペンタックスＳＤＵＦⅡと自作１０ｃｍＦ１３屈折を載せている）

■観測所が出来てから１０年になりますが、山の上にもかかわらず台風や集中豪雨にも耐えてきたのはA大工さんが丈夫に作ってくれたお陰です。建物に可動部分があることと、経時変化で材木が痩せてくるので、どうしても隙間から砂埃が入り込みますが、２～３ｃｍ幅の角材とシリコンシーラント、すきまテープなどで対処しています。

望遠鏡を塵や埃から保護するために覆いが必要ですが、私は古い綿シーツを使っています。ビニール類では埃の侵入は防げますが、蒸れたりして湿気で鏡筒に貼り付くおそれがあるので要注意です。梅雨から夏場の湿気対策としては住宅用の吸湿剤を数カ所に置いていますが、２～３ヶ月でいっぱいになってしまいます。

また、閉めきった観測室内の気温は摂氏４５度くらいまで上昇し、冬場は氷点下１０度近くまで下がりますので、光学面、赤道儀の電子回路、天体表示用のパソコンには厳しい環境です。以前、観測室に設置していたカセットデッキのゴムローラーやベルトの傷みが激しく、頻繁に修理に出したことがありました。

自然災害では落雷に遭った観測所があり、赤道儀のコントローラーが壊れたそうです。

これは観測所が出来てから分かったことですが、ドイツ式赤道儀の中にはピラーの中心を建物の中心に据えるのではなく、若干北側にシフトさせないと南側の実質スペースが狭くなってしまう機種もあります。事前に建物、赤道儀、望遠鏡の寸法を測り図面を正確に描いてみるといいでしょう。

これが自宅にあったならどんなに素晴らしいかと思いますが、これ以上は贅沢を言うべきではありませんね。
今までに「観測所を作りたいので見せてください」と来られた方が何人かおられました。これから観測所を作る方の参考になればと思います。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

（yasuyuki）

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